公募展出展小作品紹介 『小さき息吹』


 生まれ落ちてまだ間もない子ウサギは、その震える小さな身を寄せ合います。

 その小さなものを祝福するかのように、最後の命を振り絞り、老桜が花びらを散らすのです。


 生きとし生けるものはみな、生を受けたその瞬間に死との約束も交わします。永遠に残り続けるものなど、存在しないのかもしれません。

 でも胸を優しく照らすあたたかな思いだけは、せめて永遠であってほしいと願うのです。


 この作品を作ったきっかけは、なんといっても我が家にいるモルモットたちの出産に立ち会えたことです。


 以前飼っていたモルモットの男の子をお空に見送ってから、寂しい気持ちと新しい出会いをしていいのだろうかという気持ちを行ったり来たり。それほど、その子と過ごした8年近い時間は愛しくて大切なものでした。

 けれどご縁があって、ある日1匹のモルモットの女の子をお迎えする機会に恵まれたのです。しかも、妊娠していることが後に発覚!驚きましたが、あっという間に出産の日を迎え……。


 子どものいない私たち夫婦にとって、出産という奇跡的な瞬間に立ち会えるなんて本当にすごい経験でした。生まれたばかりのまだ体の濡れた小さな体を必死になめながら、2匹目を産み落としまたかいがいしくお世話をして……。

 そして、2匹のかわいい女の子が生まれました。

 80gにみたない小さな小さな体でお母さんの乳を飲んで一生懸命生きようとする姿は、命のすごさと尊さに満ちていました。


 ちなみに今ではすっかりお母さんとほぼ変わらないくらいの大きさに育って、毎日元気に駆け回っています。まだ生後4か月ほどなのに、モルモットの成長は速いなと驚くばかりです。


 この経験を作品に表現できないだろうかと思い、作ったのがこの作品です。

 終わりゆく命と、新しい命の螺旋。

 その切ないまでの愛おしさが少しでも表現できていたら、本当に嬉しく思います。

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